手作り指輪職人の現場
指輪の制作現場とはどのようなところでしょう。
テレビ番組で、高温でドロドロに溶かしたプラチナを、指輪の型に流し込んで、リングの基本形を製造したり、あるいはダイヤモンドの研磨をする加工現場が紹介されている番組をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません。一方、木目金の手作りの指輪(結婚指輪)を職人が制作する仕事場をご覧になった方はほとんどいらっしゃらないでしょう。
木目金の生まれる現場とはどのようなところでしょうか?
ひとつとして同じ模様のない手作りの結婚指輪が、どうやって生まれるか少しお話しましょう。
ダイヤモンド指輪の製造工程では、分業化によって複数の職人の手をかけて指輪が作られますが、一本の木目金の指輪(結婚指輪)を制作するのに関わる職人は、ひとりです。つまり、デザインから地金を選び、多層の金属板を作り、溶接してリングの原型を作った後に、日本刀の制作の時に用いられる手法の鍛造(たんぞう:上部で密度の高い金属に鍛えあげる)、そして最後の仕上げまで一人の職人がすべて行います。江戸時代から伝わる製法を忠実に指輪の制作に注ぎ込むのです。指輪のデザイナーが、刀鍛冶(かたなかじ)の衣を纏(まと)う、まさしく現代の匠といえます。
木目金作り職人が働く現場には、耐火レンガで囲まれた枠と溶接に使うガスバーナー、指輪用の合金を固定する治具(じぐ)や指輪の強度を高めるために使うペンチやハンマーなど、その一連の作業を行う7つ道具が工程ごとに、ズラリと並んでいるのです。