技の伝承が紡ぐカスリ織り

何層にも重ねた色の違う金属を加熱圧着し、彫りを入れて下の層にある色の違う金属を露出させた後に、叩いて平板にすることで模様として仕上げるのが、木目金の製造法です。この製法によって生み出される複雑な模様は、装飾品のデザインに最適です。重ねた金属の模様は、苦楽を共に重ねるという意味で結婚の象徴とされ、木目金は結婚指輪に用いられたとも言われています。

折り重ねるという意味では、木目金は織物の表情に見られる「重ねる美しさ」に通ずるものがあります。しかも、京都の西陣織の艶やかさというよりは、絣(カスリ)の柔らかく落ち着いた色合いに似ていると言えるでしょう。インドが発祥の地と言われる絣は、インドネシアやベトナムなど東南アジアを経て、日本に伝わってきました。織り糸の束を糸で縛って染色の深度を調整し、その染めた糸を経糸(たていと)や緯糸(よこいと)に使用することで独特の模様を表現します。

材質の違いこそあれ、色の違いを模様として表現する木目金と共通しています。

絣は、江戸時代中期(1800年頃)に、独自の織り方が編み出され、専売品として藩の財源になります。九州の久留米絣や四国の伊予絣、広島の備前絣は、特に日本三大絣と称されていました。第二次世界大戦後、欧米ファッションの普及によって、着物としての絣の需要は減りましたが、見て飽きない日本固有の織物の風合を持つ絣は、ネクタイや手作りバッグなどの素材として今でも根強い人気があります。