▶ 一般的な範囲(貴金属系:K18, Ag925 など)
用途ジャンル | 使用される板厚(1枚あたり) | 積層数の目安 |
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ジュエリー(リング・帯留など) | 0.3〜0.8 mm | 8〜25層程度 |
刀装具(鍔・小柄・目貫など) | 0.8〜1.2 mm | 6〜12層程度(厚い) |
現代工芸オブジェ/茶道具 | 1.0〜2.0 mm(例外的に厚い) | 4〜10層 |
薄手意匠・インレイ用 | 0.1〜0.3 mm | 15〜40層(層模様重視) |
■ 実例:著名アーティスト・工房の採用例(公表/インタビューより)
◉ James Binnion(米・JBMA)
- ジュエリー用木目金の世界的第一人者
- 【板厚例】Ag、Pd、14K/18K Gold:0.4〜0.7 mm
- 【積層数】通常18〜24層、稀に32層以上
- 【特徴】模様のコントラストを出すため、異種金属の板厚を微妙に変える
◉ 日本国内工房(杢目金屋、studio SORA、杢目金工房enishi等)
- 【平均板厚】Ag925, K18ともに0.5〜1.0mm程度
- 【積層数】通常8〜16層
- 【補足】外見上の模様と制作効率・歩留まりのバランス重視(削る量と模様の残り具合を設計)
- 杢目金工房enishiは0.4mmの板厚を使用することもあると、過去のインタビューで回答
◉ 刀装具・伝統技術系の事例
- 赤銅・四分一・銅などを1.0〜1.2mm厚で積層し、深い彫りに耐えられるように設計
- 模様を出すためにあえて層数を減らし、厚い層を「波打たせて」模様化する技法もあり(“荒目”)
■ 板厚と模様・作業性の関係性(設計上の判断ポイント)
板厚が薄い(0.2〜0.4mm) | 板厚が厚い(0.8〜1.2mm以上) |
---|---|
● 層数が多く取れる | |
● 模様が細かくなる | |
● 加圧・接合が安定しやすい | |
● 削り量が少ないので軽量品に向く | |
● 模様が荒々しく力強くなる | |
● 深く削っても層が残るため大胆なデザイン可 | |
● 接合面積が大きく、剥がれリスクは増える(対策要) | |
● 加圧・加熱ムラに注意 |
■ K18やAg925で板厚0.4mmが採用されやすい理由
- 圧延加工済み材料として市場流通している標準厚であり、入手しやすい
- 模様設計の柔軟性(細かすぎず、荒すぎない)が高い
- 板数と全体厚みのバランスが良いため、手加工・接合コントロールがしやすい
✅ もし、杢目金を作ってみたいと思ったら、以下の厚みで準備
あなたが目指す作品 | 推奨板厚 | 理由 |
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指輪・ペンダント・帯留など小型ジュエリー | 0.4〜0.6mm | 模様精細・層数確保・軽量設計が可能 |
刀装具・茶道具など装飾品全般 | 0.8〜1.2mm | 深彫り/立体造形に強く、模様がはっきり残る |
模様だけを極限まで緻密にしたい場合 | 0.2〜0.3mm | 多層化して模様重視、ただし手間増 |
✅ 結論
K18やAg925において、0.4mmはプロアーティストたちも標準的に用いる「模様と加工性のバランスが取れた厚み」です。
より重厚感や大胆な模様設計を行いたい場合は、K18/Ag側を0.6〜0.8mmに調整してみるのも良いでしょう。
【参考文献】
2000年4月9日付 朝日新聞 東京地方版/秋田 29頁、
2001年9月1日付 朝日新聞 東京地方版/秋田 32頁、
2004年8月28日付 朝日新聞 東京地方版/秋田 26頁、
2009年11月6日付 朝日新聞 大阪地方版/石川 30頁、
2005年10月19日付 毎日新聞 地方版/秋田 24頁、
「宝石の四季」 No.198、 No.199
「技の伝承 木目金の技法について」
アートマニュアルシリーズ メタルのジュエリークラフト
「人間国宝・玉川宣夫作品集」燕市産業資料館
「金工の伝統技法」香取 正彦,井尾敏雄,井伏圭介,共著
「彫金・鍛金の技法I・II」 金工作家協会編集委員会編
Wikipedia(ウィキペディア)
「金工鐔」光芸出版
MOKUME GANE JEWELRY HANDBOOKS (IAN FERGUSON著)
Mokume Gane – A Comprehensive Study (Steve Midgett著)
Mokume Gane. Theorie und Praxis der japanischen Metallverbindungen (Steve Midgett著)
Mokume Gane: How to Layer and Pattern Metals, Plus Jewelry Design Tips(Chris Ploof著)
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