【書籍レビュー】
『金工鍔』小窪健一・益本千一郎著/光芸出版刊
書籍概要と内容紹介
『金工鍔』は、日本刀の鍔(つば)を中心に、その歴史や技法、著名な作家、流派の系譜を詳細に解説した貴重な資料です。江戸時代から続く金工の名家の家系図や、多様な技術を用いた鍔の写真を豊富に掲載し、鍔の美術的・文化的価値を深く掘り下げています。伝統技法の継承と芸術性の高さを感じ取れる一冊です。
印象に残った点
本書では、特に装剣金工界の中心的存在であった後藤家が制作した鍔の写真が印象的です。七宝(しっぽう)や象嵌(ぞうがん)など多彩な技法で仕上げられた鍔の数々は、技術の幅広さと工芸美術の奥深さを実感させてくれます。こうした写真資料は、鍔の細部まで鑑賞できる貴重な資料となっています。
鍔に対する理解の変化
江戸から続く金工各家の系譜や多種多様な鍔の紹介を通じて、鍔の歴史的重みや奥深さをより強く感じることができるようになりました。単なる装飾品としてだけではなく、鍔が日本文化と歴史に根付いた重要な工芸品であることを再認識させられます。
他書と比較して優れている点
本書は最新の書籍にはあまり見られない、文献的な価値が高い内容が特徴です。古い資料や系図を含む詳細な記録は、研究者や愛好家にとって非常に貴重な情報源となっています。歴史的背景を重視した記述は、学術的な観点からも評価できます。

おすすめしたい読者層
刀装具のマニアやコレクター、日本刀や金工芸術に深い関心を持つ方に強くおすすめしたい一冊です。専門的な内容ながら、豊富な図版と資料により鍔の世界を多角的に楽しめます。
まとめ
光芸出版の『金工鍔』は、江戸期から続く鍔の技術と歴史を体系的に学べる重要書です。小窪健一氏と益本千一郎氏による緻密な調査と資料収集に基づく内容は、伝統工芸の深い理解に役立ちます。鍔に対する知識を深めたい方にとって、欠かせない名著と言えるでしょう。
