2000年1月1日にEARTHSHINE PRESS社から出版

『Mokume Gane – A Comprehensive Study』は、Steve Midgett氏による木目金制作を詳しく説明した実践的な専門書で、2000年1月頃にEARTHSHINE PRESS社から出版されました。私、髙田が24歳の時に初めて手にした本になります。

概要と内容紹介

『Mokume Gane – A Comprehensive Study』(初版西暦2000年)は、アメリカを代表するジュエリーアーティストであり、1990年代後半から木目金の研究を開始した木目金の第一人者であるスティーブ・ミジェット氏による、木目金技術に関する決定版的な専門書です。本書は木目金の歴史、伝統技術、現代における応用までを網羅的に解説しており、伝統工芸としての日本の木目金と西洋における技術的・芸術的発展の両面に光を当てています。

具体的には、木目金の起源と発展、金属の選定と層の重ね方、加熱・圧延などの工程解説、そして模様の創出方法を豊富な写真と詳細な解説で示しています。ミジェット氏独自の視点から、素材の組み合わせや仕上げの工夫など現代的な実践例も多数紹介されており、実践的な技術書としても価値があります。


本書の特徴

  1. 歴史的背景と技術の融合
    日本の伝統工芸である木目金がどのように生まれ、どのように技術が進化したのかを深く掘り下げており、単なる技術書に留まらず文化的側面も学べるのが大きな魅力です。
  2. 実践的かつ詳細な工程解説
    金属の準備から成形、加熱、模様の出し方まで、各工程におけるポイントを写真付きで詳細に説明。初心者だけでなく、すでに技術を持つ職人やジュエリー作家にとっても参考になる内容です。
  3. 豊富な写真と図版
    実際の作品例や製作過程の写真が多く掲載されているため、文字だけでは掴みづらい木目金の繊細な美しさや複雑な構造が視覚的に理解できます。
  4. 西洋における木目金の展開
    日本国外での技術の発展や応用例を紹介しており、伝統工芸をグローバルに理解するうえで貴重な視点を提供しています。

読後の感想と評価

スティーブ・ミジェット氏の深い知識と情熱が伝わる一冊で、木目金という技術に興味を持つ人にとっては必読の書と言えるでしょう。特に、伝統工芸の持つ芸術性だけでなく、科学的な技術解説もバランス良く含まれているため、学術的な研究者から実践的な職人まで幅広い層に対応しています。

ただし、本書は技術的に専門的な内容が多いため、木目金について全くの初心者が読み始めるにはやや敷居が高い部分もあるかもしれません。逆にある程度の基礎知識を持つ読者には、新たな発見が多く、制作のモチベーションや理解を深めるのに非常に有益です。

全体的に、木目金の歴史的価値と現代的な技術進化を包括的に理解できる点で高く評価できます。


スティーブ・ミジェット(Steve Midgett)氏について

スティーブ・ミジェット氏はアメリカを拠点に活動する金属工芸作家で、特に木目金技術の普及と革新に尽力している人物です。彼は長年にわたり、伝統的な日本の木目金を研究し、その技術を西洋のジュエリー制作に応用しながら独自のスタイルを確立しました。

氏はワークショップや講義を通じて技術継承にも熱心に取り組んでおり、多くの若手作家に影響を与えています。また、木目金に関する著作や論文も執筆しており、工芸分野での権威として国際的にも認められています。

正確な経歴の詳細や氏の個人的な背景については、公開情報が限られているため不確定な部分がありますが、彼が木目金技術の研究と普及において重要な役割を果たしていることは確かです。


まとめ

『Mokume Gane – A Comprehensive Study』は、木目金の真髄を学びたい技術者・研究者にとって非常に価値の高い書籍です。伝統と革新が融合した内容で、木目金の理解を深めるための確かな手引きとなるでしょう。スティーブ・ミジェット氏の専門的かつ熱意あふれる執筆は、読者に木目金の魅力を強く伝えます。


25年以上前から杢目金の研究に着手し、3ヶ国語に翻訳されベストセラーとなった書籍を発売したスティーブ氏の功績は多大です。