合わせ金属の不思議な結婚指輪
木目金という言葉は、江戸時代前期に生まれた正阿弥伝兵衛(しょうあみでんべい)本名・鈴木重吉によって製法が発案されたことによって生まれました。
正阿弥伝兵衛は、佐竹藩にお抱え工として仕え、刀の装具を造る名工として素晴らしい細工物を残しました。木目金の素晴らしさは、性質の違う金属を重ねあわせ、それぞれの金属が持つ色合いを美しい木目として調和し、表現されていることです。この世界的にも大変貴重な技術も、明治維新後の廃刀令によって廃れてしまいます。ところが、海外に流出した日本刀に施された「mokume gane」は、世界のコレクターを驚愕させました。日本人の生真面目さが生み出した工芸品は海を越え、言葉も文化も違う人々に認められたのです。不思議な運命に導かれた木目金の技術は、浮世絵や有田焼のように日本で再評価されました。
技法の盛衰はあったものの、今では確かな装飾品の制作技術して生き続けています。結婚指輪や婚約指輪をはじめ日本の伝統的工芸品である茶器や花器、日本を紹介するおもてなしの器や鍋など多岐に渡って木目金の技が施されています。
木目金の誕生から既に300年を経過していますが、江戸武士の刀を美しく飾っていた技術は、21世紀に生きるカップルの幸せのしるしとして左手の薬指に輝いています。