金属の不思議

木目金の結婚指輪には、銀、18金、金、プラチナなど複数の金属を重ねあわせて一本の地金にします。複数の金属を重ね合わせる目的は、各々の金属がもつ色合いを木目のような模様に浮き出させるためです。この木目金の技法は、江戸時代の刀鍔(かたなつば)を手作りする際に用いられた技が、現在の職人たちによって受け継がれたものです。

例えば新しい10円玉の色を思い出してみてください。赤銅色という表現もあるように明るい赤色をしています。銅の両隣を銀で挟めば、紅白の光沢を表現できます。18金も白系の光沢を持つ金属ですが、銀の光沢とは異なります。銀と18金を隣り合わせて配置することで、微妙なグラデーションを表現できます。職人の感性で、自由に模様や色合いを表現できるのです。

ただし、単に色の違う金属を貼り合わせるだけでは木目金とはなりません。金属各々には硬さや伸縮率(しんしゅくりつ:温度差による金属が伸び縮みする割合)の違いがあります。したがって木目金の技法では、それぞれの金属の性質を調和するような特殊な貼り合わせ方をします。

話はちょっと外れるのですが、銅は、元素記号がCu、原子番号が29の元素です。銅Cuの色は赤色です。ところが硫酸銅CuSo4という化合物になると不思議な事が起こります。粉末の状態だと白色ですが、水分と出会うと明るい南洋の海を思わせるような青になります。

これはひとつの例ですが、金属は化合物になると、様々な表情を現します。また硫酸銅には、強い滅菌、殺虫能力があります。金属の不思議な世界は、奥が深いものです。