江戸から受け継ぐ和の心
江戸時代の武士の刀の鍔(つば)を飾っていた手作りの木目金が、今ではカタチを変えて、美しい結婚指輪の製法・技法として伝えられているというお話をしました。
同じように江戸時代の文化は時代を超え、様子はアレンジされながらも、様々な形となって今に伝わっています。たとえば浴衣(ゆかた)や扇子(せんす)は、夏祭りの定番として若い人たちに人気のファッションとして受け入れられていますし、和柄や和の色使いは常に意識されながらデザインに取り入れられています。
というよりも既に私達の意識の下に根付いているものですから、気がついていないかもしれません。明治の世になって以降、文化は西洋化され日本古来のものは失われていったとも言われていますが、文化などというものは、それぞれの時代で流行り廃れがあるものです。
それでも本当に良いものはいつの間にか改めて思い出され、注目され、認められるようになります。今に伝わる工芸品や文化は、残るべくして残った日本人の心とも言えます。世界に認められる「Kawaii(かわいい)」やほぼ日本と同じタイミングで出版される週刊マンガ雑誌にしても、いわゆる西洋にはない日本の伝統テイストが受け入れられているのです。
日本人にとって当たり前である和のデザインや柄、配色が、海外の人にとっては、新しい文化なのでしょう。なにげなく生活の中に育まれている「和風」は、江戸時代あるいはその時代よりも遥か昔から伝えられている和の心と言えます。